[Internet Radio]音楽著作権についてまとめましょう。その1。
さてさて、日本で「市販の楽曲を合法的に流せるインターネットラジオ」を実現すべくジタバタしていたわけですよ。いろいろ本を読んでみたり各方面に問い合わせてみたりして、法律関係・権利の処理関係について、かなりクリアに理解できつつあるような。...ということで、今年の内にまとめておきましょう。
まずは著作権法に目を通してみるのが最初のステップです。オンラインでは、例えば著作権情報センターのWebページで全文を読むことが出来ます。トップページ左のメニューから「著作権データベース」→「著作権関係法令データベース」→「国内法令」→「著作権法」。
「著作権」「著作隣接権」だとか「放送」「有線放送」「自動公衆送信」などなど、耳慣れない言葉が目につきます。言葉の定義を噛みしめながら素直に条文を読んでみると、まず次のような疑問が浮かぶのではないでしょうか。
- 結局、「インターネットラジオ」というのは「公衆送信」のうちの、どのカテゴリに属するのだろう。
著作権法では「公衆送信」というものを以下のように定義しています。
で、公衆送信の中身がいくつか定義されていて、
有線放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう。(第2条1項 9の2)
自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。(第2条1項 9の4)
と、これに加えて上記で定義されない「その他の公衆送信」に分かれます。
さてさて、これらの条文を素直に読むと、たとえばインターネット上で「オン・デマンドで楽曲を配信する」という行為は「聴きたい曲のリンクを利用者がクリックして再生/ダウンロードが始まる = 公衆からの求めに応じ自動的に行う」公衆送信なので、自動公衆送信にあたるのだなぁ...ということが判ります。
では、いわゆる「インターネットラジオ」は?
ここで言う「インターネットラジオ」とは、SHOUTCastなどを使って実現できる、リアルタイムなストリーミングキャストのことです。この手のストリーミングの特徴は、
- サーバからプログラム(番組:ライブ/録音に関わらず)を垂れ流している。
- 聴取者は自分が聴きたい楽曲を選べない。現在ストリーミングされている番組を聴けるだけである。すなわちオンデマンドではない。
- 複数の聴取者が同一の番組を同時に聴くことになる。
ということになりますね。
上記の著作権法の定義に照らしてみると、これは「有線放送」という概念に限りなく近いように思えます。少なくとも「公衆からの求めに応じ自動的に行う」という「自動公衆送信」の定義には当てはまらないよなぁ。あるいは「その他の公衆送信」に分類されるかもしれんなぁ...と考えられますよね、素直に条文を読めば。
なぜこの定義に拘るのかというと、「放送/有線放送」か「自動公衆送信」か「その他の公衆送信」かによって、関わってくる権利(あるいは権利者が行使できる権利)が違ってくるわけですよ。許諾を受けるべきモノが変わってくるわけです。
結論を言えば、インターネットラジオは「自動公衆送信」ということになっています。ちょっと納得しかねるのですが、いちおう文化庁や権利者団体はそういう見解を持っているみたい。ということで「インターネットラジオで合法的に市販CD音源を使用する」ためには、楽曲の著作権者および制作者・実演家といった著作隣接権者(送信可能化権が生じます)の許諾を受けなければなりません。
ひとまずここまで。次回以降に続きます。
参考になった書籍たち。
最後の『JASRAC概論』、これはなかなか良い本です。ネットにありがちな、感情に任せたJASRAC害悪論などとは一線を画したJASRAC論・著作権論・著作権法論になっています。特に「第6章・国際条約と日本国著作権法」というパートは良いです。ぜひ、ご一読を。
ところで著作権法、平成18年に割と大きめの改正が行われています。解説本を選ぶときは、少なくとも平成18年以降に出版されたものを選ぶと間違いがないと思います。
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