たまにはラジオについて書いてみよう。

 以前、しばらくラジオ業界で働いていたので、こういう記事は今でも気になってしまうのです。

  →「好きになってね!頼むよ!」ラジオ業界が一致団結して必死のキャンペーン:BLOGOS

 随分前から危機的な状況に陥っているラジオを何とかしよう、と東京で行われたキャンペーンの模様と、TBSラジオの社長へのインタビュー記事。随分と的確な現状認識と問題点把握をなさっているのに驚いた。
 こういう考えを持った人が、せめて二十年前にトップに立っていてくれたら、現在のラジオを取り巻いている問題も少しは違っていたかなぁ…と思ったりもするのですが、如何せん遅過ぎます。

 ラジオのリスナー減少の理由、もちろんテレビの多チャンネル化やネットの普及というのもかなり大きな要因ではあるけれど、ラジオ自身が蒔いた種も大きいのです。TBSラジオの加藤社長の言葉を引用してみる。
ラジオ業界は10年、20年、30年というタームでの、リスナーを開拓する努力が足りなかったんじゃないかと思う。ラジオの中心は中高年。じゃあそこに絞って番組を作っていくと、その後が途切れるわけですよ。
 まさにこれ。心ある番組製作者は、もう何十年も前から言ってきたことなのにね。おそらく現在では、三十代以下の世代は「ラジオを聴いたことがない」「そもそもラジオって何?」なんていう人が大多数を占めているんじゃないかな。

 記事中に何度か出てくる「若者のラジオ離れ」という言葉。でも「若者がラジオ離れをした」のではなく「ラジオのほうが若者から離れていった」というのが正しいわけで、これを今から修正してゆくとして、「若者」を取り戻すまでに一体どれだけの時間がかかるのか。効果が上がるまで、業界は持ちこたえられるのかどうか。

 ラジオは既に「どうやって治癒させてゆくか」というレベルではなく、「延命治療をいつまで続けるか、いつ生命維持装置を外すのか」を議論せざるを得ないくらいの状況なのではないかなぁ。とくに地方では。

 ラジオ放送が必要なごく少数の人たちのためだけに、営利を放棄して放送し続けるか、放送免許を返上するか、それともむっちゃ頑張ってタイムマシンを発明して二〜三十年前に戻ってやり直すか、もうそんな選択肢しか残されていないのかもしれません。

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