2ちゃんねる発祥の、割と有名なコピペにこんなのがあります。
中学校1年のときのこと
授業中に隣の席の女の子がおしっこ漏らしていました
女の子の席は一番後ろのはじだったので他には誰も気がついてない様子
僕はおもむろに席を立って無言で廊下へ
先生が後から追いかけてきたけど無視して手洗い場でバケツに水を汲むと教室に戻り
その女の子にぶっかけました
教室中大騒ぎになり、学校に両方の親まで呼ばれました
うちの親は相手の親に平謝り
なぜそんなことをしたのか問い詰められましたが
僕は結局最後まで口を割りませんでした
家に帰る途中で女の子が事実を親に話したらしく
お礼を言いにうちまで来ていました
時は過ぎて今その女の子は僕の奥さんです
ちょっといい話系のコピペ。
で、明治時代に書かれた戸川残花の『幕末小史』という書物。この本の巻末のほうに、徳川家茂の逸話として、こんな話が載っています。
御若年の時の事
余が分家
、
戸川播摩守安清は蓮仙と号し
、
隷書を能くし
、
当時知名の文
人なりしとは世の知る所なり
。
安清は
、
家茂公の習字の師なりき
︵
御相
手と称せり
︶
。
当時は古希を過ぎたる老翁なりしが公の机前に正座し覚
えずして少しく尿
︹
ゆばり
︺
を漏らせり
。
安清が苦心如何ばかりしか
。
其
︹
その
︺
時公は机上の大なる水入れを手に取り
、
安清が白髪の頭へザ
ツトこぼして手を打ちて笑ひ給ひしにぞ
、
近臣等は余りの御悪戯と諌め
しが
、
後に其
︹
その
︺
事ありしを知り
、
安清は云ふまでも無く近臣も其
︹
その
︺
機智と其
︹
その
︺
仁恵に感涙を流ししことありしと聞く
。
今日とても宮中の御儀式は申すまでもなく
、
御前に於いて敬礼を失する
ことあらば譴責
︹
けんせき
︺
を受くるまでもなく自ら其
︹
その
︺
職を退
き罰を待つ可きは当然なり
。
特に繁文縟礼
︹
はんぶんじ
ょ
くれい
︺
の為
には生命家禄に関する事の少なからざる
。
幕府の代に於て老年頽齢の人
と云えども君前に於て大不敬ありしと監察吏の聞く所とならば譴責
︹
け
んせき
︺
は免る可
︹
べ
︺
からず
。
公が悪戯を為して其
︹
その
︺
罪を免れ
しめしは凡庸の器量と云ふ可
︹
べ
︺
からず
。
句読点、改行は引用者。旧字体は新字体に直しています。
「家茂が若かりし頃のこと、習字の師であった戸川安清が、書を教えている時に高齢のせいで失禁してしまった。これに気付いた家茂が、机の上の水入れを取って安清の頭の上から水をぶっかけた。臣下はイタズラが過ぎると諌めたが、後に安清の粗相を誤摩化すためにやったのだということを知り、家茂の機転と思いやりに感動して涙を流したことがあったそうだ」という話。
うん、まさしく「授業中におもらし」コピペの原典。
Wikipediaの「徳川家茂」の項や、たまたま立ち読みした『ちょっといい話--いますぐ泣ける!感動の実話100選!』という本にもこのエピソードが載っていますが、少し状況描写がいじられていますなぁ。出典の『幕末小史』におけるこの逸話に関する記述は、上に引用した部分のみ。逸話というものは、時とともに脚色され、尾ひれがついてゆくものです。
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