Ben Foldsの音圧改訂版アルバム。これは素晴らしいコンセプト。

PC版へ 2009年02月16日

ピアノポップと言えばBen Foldsです。

輸入盤で発売されている彼の作品『Stems & Seeds』が、現代の音楽業界へのアンチテーゼともいえる素晴らしいコンセプト。題して『音圧改訂版』。

 Stems & Seeds / Ben Folds:2009

  2枚組で、内容は前作『Way To Normal』の音圧改訂リミックスと"Isolated Audio Track Disc"。

音圧改訂版』とは何ぞや。Ben Folds公式ページのニュースリリースからざっくり訳してみると...
この10年というもの、よりデカい音・より圧縮した音での録音が増えてきた。そういうミックスはカーステレオやiPod、ラジオで聴くには良いのです。でも音圧が圧縮されていないミックスの方がダイナミックで、良いオーディオ機器で聴くと良いのです。
で、ファンからの声を受けて『Way To Normal』の、音圧を圧縮しないバージョンをリリースすることにしました。昔ながらの"静か"で"ダイナミック"なバージョンになっています。もちろん、元のバージョンのプロデューサー、エンジニアがした仕事には敬意を払っていますよ。

「音圧を圧縮する」って、平たく言うと「デカい音を抑え込んで、小さい音との音量差(ダイナミックレンジと言います)を小さくする」ということね。この操作を行う機器が「コンプレッサー」。よく「コンプをかける」と言いますね。「コンプをかける」=「音圧を圧縮する」。

で、曲にコンプをかけた後に全体の音量を上げてやると、曲全体が大音量で鳴り響くようになる訳ですよ。

これ、何がメリットか。
Ben Foldsも言っているように、カーステレオなどノイジーなリスニング環境でも、曲がノイズに負けなくなります。またiPodなどの(比較的)貧弱な再生環境でも曲が聴きやすくなります。

では、デメリットは。

曲に表情が無くなります。
例えばクラシックのコンサートを聴きに行ったとしましょうか。ピアニッシモからフォルティッシモまでの音圧の幅、素晴らしいですな。でももし、このダイナミックレンジが半分だったら、あるいは3分の1だったら...。曲はのっぺりとした感じ、表情が無くなってしまいます。
聴いているほうは面白くない。全部似たようなミックス、似たような表情。

世界中のポップ・ミュージックが患っているこの「コンプかけ過ぎで曲から表情が消える病」と「音をデカくしとけば目立つんじゃね?」的な莫迦プロデュースへの反攻が、アーティスト側から出て来たのはとっても良いことのような気がします。

リスナーも馬鹿じゃないんだから、こういうダイナミックレンジを広く取ったミックスの曲を聴いたら「なんかイキイキしてるよね〜」とか「他のと雰囲気違うよね〜」とか感じると思うんだよね。そういう方向で他との差別化を図っていきませんか。アルバムをUSBメモリーで発売なんて小手先に走るんじゃなくってさ。

そうそう、この『Stems & Seeds』、2枚組ディスクのうちの1枚"Isolated Audio Track Disc"とは何ぞや。

これは『Way To Normal』収録曲が各楽器パート毎に分かれたGarageBand形式で収められていて、自分で楽曲のミキシングを楽しめる! という、好きな人にとってはヨダレが出るくらい素晴らしいオマケディスク。Mac OS 10.4以降必須だそうです。

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iLife '09

そういえばBen Folds、〜Five時代を含めたオールタイム・ベストが出るっすな。

 Ben Folds File - Complete Best of Ben Folds Five & Ben Folds

  → タワーレコード
  → Amazon.co.jp

彼 / 彼らも活動15周年ですわ。
Ben Folds Fiveの名前が日本で一気にポピュラーになったのは、あの伝説の月9ドラマ『ロングバケーション』の中でフィーチャーされたのがきっかけだったよなぁ。それも1996年のことです。

お互い、歳を取りましたなぁ。
(最近、このフレーズで締めることが多いような気がする)


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