「人体に影響を及ぼす放射線量」の報道がわかりにくい。

テレビや新聞などを見ていて混乱してきたので、メモ。どうも「年間の値」と「毎時(一時間あたり)の値」の区別があいまいなので、とても判りにくいのです。

単位をマイクロ・シーベルト(μSv)に統一します。1000マイクロシーベルト(μSv)が1ミリシーベルト(mSv)。
  • 人が年間に自然界から受けている放射線量の世界平均 : 2,400 μSv
  • 一般市民の年間線量限度(自然界 / 医療行為を除く) : 1,000 μSv
  • 胸部CTスキャン 1回分 : 6900 μSv
  • 健康に影響が出る危険性が高まると言われる年間線量 : 100,000 μSv

放射線診療従事者(X線技師など)等に定められている許容量は
  • 1年間の総量 : 50,000 μSv
  • ただし連続する5年間で : 100,000 μSv

で、現在発表されている各地の放射線量は、「もともと自然界から受けている放射線量+福島第一原発から飛散した放射性物質が発する放射線量」の、一時間あたりの値です。

つまり、この一時間あたりの数値が今後変化しない(=これ以上、原発からの飛散が生じない & 飛散した放射性物質が拡散しないでその場所にとどまる)とするならば

その場所で今後1年間に浴びる放射線量:μSv =
         現在の1時間あたりの測定値:μSv/h × 24(時間) × 365(日)

となるわけですね。

逆に考えると、
年間許容量を厳しく見積もった場合、
( 自然放射線量 + 一般人の年間線量限度 ) / ( 24時間 × 365日 )
   = ( 2,400 + 1,000 ) / ( 24 × 365 ) = 0.388 μSv/h
放射線診療従事者の基準で計算した場合、
50,000 / (24 × 365 ) = 5.7 μSv/h
健康に影響が出る危険性が高まるという値で計算した場合、
100,000 / (24 × 365 ) = 11.4 μSv/h 以下

…というのが、健康に被害が及ばないであろう放射線量の、1時間あたりの値です。

発表される(1時間あたりの)放射線量測定値はこれらの値と比較されるべきであって、「年間の許容値の何百分の一だから…」だとか「CTスキャンのときに浴びる線量と比較して…」という比較は意味がありません。

この「一般人の年間線量限度」という数値はいかにも厳格すぎるので、ひとまず自分の地域での測定値が 11.4 μSv/毎時常時(数ヶ月とか1年とかいうオーダーで)超えるようだったら厳しいよ、という認識で良いのかなぁ。

ともかく、情報を正しく認識することが大切です。

これは「放射線を長期間浴び続けたら」という場合の話であって、「超強力な放射線を一瞬で浴びたら」というのは、また別の話になります。

現場で文字通り命を賭けてくださっている自衛隊・警察・消防の方たちが無事にミッションを終えられることを願うばかりです。

  → 福島原子力発電所 Q&A | 京都大学 / 日本放射線影響学会

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