ネットラジオで逮捕者が出たよ。

PC版へ 2010年05月16日
JASRACのプレスリリース。

  → 音楽ファイルを違法にライブストリーム配信しているインターネットラジオ番組運営者を著作権法違反の疑いで逮捕|日本音楽著作権協会(JASRAC)

記事を読む限り、被疑者に同情の余地はありませんねぇ。他人の創作物を許可/対価なしに使用してはいけないのです。許諾を取りましょう。

音楽著作権のインターネット利用についての許諾手続きの窓口はJASRACです。→ JASRACネットワーク課。利用形態に合わせて手続きをして、規定の料金を払えばOK。個人のホームページでも音楽が利用できます。

注意しなくてはいけないのは、JASRACで許諾が受けられるのは「音楽著作権の利用」のみだということです。大雑把に言うと、売られている音楽CDなどは作詞・作曲などの「著作権」と、演奏・歌唱・製作などの「著作隣接権」という権利が関わっています。「JASRACでネット利用の許諾を得た」=「JASRAC管理楽曲を自分で演奏したり歌ったり(あるいはボーカロイドに歌わせたり)して、ネットに掲載してもいいよ」ということであって、著作隣接権はクリアになっていないので、市販の音楽CDをネットで流してもいいよ...ということにはならないわけですね。

YouTubeニコニコ動画がJASRACと契約を結んでいて「JASRAC管理楽曲が使用可能」ということになっていますが、これも当然「JASRAC管理楽曲を自分で演奏した動画をUPしてもいいよ。使用料はYouTubeやニコ動が払うよ」ということで、「音楽CDに収録されている曲をそのまんまUPしていいよ」ということではないのです。気をつけましょう。

つまり今回逮捕された群馬のなんちゃらさんは、例えJASRACの許諾を得ていたとしても、著作隣接権者から告発される可能性もあったということです。

じゃあ著作隣接権の利用許諾も取ればいいじゃない。そうすればネットラジオで音楽CDをかけられるじゃない。

...それはムリなのですわ。音楽著作権に対するJASRACのような、音楽のネット利用における著作隣接権の管理/許諾窓口が存在しないのです。

いちおう日本レコード協会(レコ協)や実演家著作隣接権センター(CPRA)などがあるのですが、この人たちは音楽ユーザーから見れば只の業界団体。JASRACのように権利者と利用者の間に立とうなどとは露ほども思っちゃいません。
去年だったか、レコ協に問い合わせてみたんです。「個人ユーザがCD音源のネット使用許諾を得る場合、一括して許諾申請を受け付けるような窓口はあるの? 設置の予定はあるの?」と。返答は「一括窓口は無いし、今後つくる予定も無いよ。使用許諾はそれぞれのレコード製作者から受けてね」。レコ協は、そのレコード製作者を束ねている団体とちゃうんかい。仕事せんかい...と思ったのですが、まぁよかろう。
CPRAの方も、公式ウェブページのQ&Aに「現在、インターネット配信に係る実演家の権利を集中管理している団体はございませんので、ひとりひとりの実演家に直接連絡をとり許諾を得ていただくよりありません」なんて書いてある。その実演家を束ねているのがCPRAちゃうんかい...と思うのですが。

ということで、個人レベルでCD音源のネット利用するためには、まずJASRACで著作権の利用許諾を取って、各レコード製作者に許諾を取って、各実演家に許諾を取ればOK。現実的には、絶対ムリ。なのですね。

でもちょっと待った。

radikoはどうなのさ。ネットのストリーミングで音楽CDがバンバン流れているではないか。radiko発足時のニュースで「JASRACや日本レコード協会といった権利団体とも合意を得た」とありましたな。単なるネットラジオと地上波サイマルという違いはあれど、個人のネットラジオ運営熱望者に対しては「使用許諾はレコ協が窓口じゃないから」と言い、放送局(と電通がradikoの運営に関わっています)に対しては権利団体として話し合いに応じる。

ダブルスタンダードは許しませんよ。あと放送局の既得権益も。

 

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