YouTubeとJASRACが包括契約に合意。

PC版へ 2008年10月24日
動画サイトYouTubeと音楽著作権料徴収管理団体JASRACが、楽曲利用に関する包括利用許諾契約を締結。YouTube上でJASRAC管理楽曲の(合法的な)利用が可能に。

ITmedia Newsの記事
YouTubeのプレスリリース
これで何が変わるのか。

「投稿動画にCD音源とか使い放題じゃん!」... 残念ながら、そうではないのです。

※以下、自分の理解の範囲で、自分の言葉で書きます。勘違いや誤解があったらご容赦。ガンガン突っ込んで下さい。
楽曲など創作物には「著作権」があります。

狭義の「著作権」とは、簡単に言うと「創作者の権利」のこと。自分が精魂込めて作ったモノを、勝手にパクられたりしたらたまらない。「創作者の権利」を認めて、そういうことしてはいけませんよ、と規定しているのが著作権法ね。

で、もういっこ「著作隣接権」というものがありまして。
これは「著作物を世に伝達する役割を担う人の権利」のことで、音楽CDで言えば「実演家」「レコード会社」「放送局」などなどが、この「著作隣接権」を持った人たちということになります。

さて、ココで注意。

JASRACは、著作権管理団体ではあるけれども、著作隣接権管理団体ではない。

これ大事。

今回のYouTubeとJASRACとの合意によって、YouTube上での音楽著作権の取り扱いはクリアになりました。つまり、JASRAC管理楽曲をYouTube上の動画で使用してもよろしい、ということになったのです。

が。

「著作隣接権」は、この包括契約の中には入っていません。
というか、元々JASRACは著作隣接権を管理していないのだから、契約に盛り込まれる筈が無い。

JASRACのホームページ内に「著作権と知的財産権」という説明文書があります。そこにも明確にこう書いてあります。

例えば、1枚のCDには作詞家・作曲家の権利(著作権)のほか、レコード会社や歌手・演奏者の権利(著作隣接権)も含まれていますので、市販CDを音源としてインターネットのホームページにアップロードするような場合には、著作権者(JASRACの管理作品であればJASRAC)の許諾と同時に著作隣接権者の許諾が必要です

著作隣接権者全員の許諾を取るなんて、個人では無理無理。

だから結局どうなんだ、というと、
ということですわ。

だから「YouTubeで自分が選曲した曲をガンガン流してDJやるぜ!」なんて事は、(合法的には)無理。そんな野望を抱いている人にとっては、ほとんど意味のない今回の契約締結です。

でもさ、前向きに考えてみると。

例えば「自分のホームページで既成楽曲をBGMにして流したい」と思ったりした時に、オーディオファイルやMIDIファイルを直接ホームページに埋め込むのは著作権法的にNGでしょ。
まぁ見つからなかったら大丈夫なんだけど、見つかった時にはJASRAC側は「著作権保護」の大義名分のもと、あらゆる手段を取って潰しにきますからね。気をつけないと。
でもYouTubeって、動画を直接リンクして自分のホームページに貼れるじゃない。
だから「自分のこの文章は、ど〜してもガッキーの『赤い糸』をBGMにして読んでもらいたい」っていうときは、

  1. 『赤い糸』を自分で演奏したりMIDIで打ち込んだりする。
  2. 動画ファイルに仕立て上げてYouTubeにアップロード。
  3. その動画ファイルを自分のサイトにリンク。
これで誰からも文句を言われる事無く『赤い糸』をBGMに使う事ができる訳ですよ。

まぁ実際には、1か2の段階で面倒くさくて諦めると思うけれど。

歌詞に関しても、YouTubeを使う事ができそうね。
当然、歌詞にも著作権があって、「引用」を超える範囲の使用は法律的にはNG。でも今回JASRACと契約を締結したYouTubeを使えば、

  1. 歌詞がスクロールしてゆくような動画を作成。
  2. YouTubeにアップロード。
  3. その動画ファイルを自分のサイトにリンク。
こうすれば、完全に合法的に歌詞の全文掲載が可能になる。

まあなんと面倒な事。でも、与えられた権利は有効に、めいっぱい使いましょ。

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