ちょっと暇なので、前々からやってみたかった検証をしてみた。
「高音質CD」という代物が出回っています。SHM-CDとかHQCDとかBlu-spec CDとか。詳しいことは、それぞれのホームページを見てもらうとしてですな。
→ SHM-CD Super High Material CDとは
→ HQCD (Hi Quality CD)
→ Blu-spec CDとは
要は「基盤に透明度の高いポリカーボネードを使用して、さらに反射膜の素材を改良したことで正確なビットを形成できるようになり、高精度の信号読み出しも可能になった」ので「従来のCDより高音質になった」ということですな。
ほんとかいな。
今回、SHM-CDは本当に高音質なのか? ということを確かめてみようと思います。
用意した音源はコチラ。
これがSHM-CDだ! 2
ロック/ソウル/ブルースで聴き比べる体験サンプラー
→ タワーレコード
→ Amazon.co.jp
『これがSHM-CDだ!』シリーズは、お値段1,000円で、同一内容のノーマルCDとSHM-CDがセットになったお得アイテム。割とメジャーな楽曲がオムニバス収録されている。サブタイトル(キャッチコピー?)は「Don't Think, FEEL!」というブルース・リーの名台詞。
「考えるな、感じろ!」って言われても、じっくり考察しちゃうからね。
とは言っても実際に「高音質かどうか」を評価するためには心理実験をしなくてはなりません。それは時間的にも物理的にも無理な話なので、とりあえず「SHM-CDから再生される音と通常CDからの音には何か物理的に違いがあるのか」を調べようと思います。両者のあいだに物理的な差があれば「SHM-CDは高音質である」という主張が正しい可能性が残されます。逆に両者のあいだに差が認められない時には「高音質CDってマユツバじゃん」と言い切れる可能性が大、となります。
まずは比較のための予備的なテスト。
SHM-CDと通常CD、両者に記録されている音楽のデジタルデータが同じでないと、音質の比較をしても意味がありません。
ということで、まずは『これがSHM-CDだ! 2』のSHM-CDと通常CDのデータをパソコンに取り込んで、両者に記録されているデータが同じかどうか比較をしてみましょう。本当は直接CDの中身を覗くのがよいのですが、Macでは、それがなかなか難しそうだったので普通にリッピングしてみます。
・リッピングに使用したアプリケーション:CUBASE SX
・SHM-CD、通常CDそれぞれの曲を、16bit / 44.1kHz のwavファイル形式でHDDに取り込む。16bit / 44.1kHzで取り込めば、元のビットデータを崩す可能性は無い筈。結果は、両者が見事に一致。寸分の違いもありませんでした。
取り込んだ時のダイアログのキャプチャ。上が通常CD、下がSHM-CD。トラック長もサイズも(当然ながら)同一ですな。
・取り込んだら、Macのターミナル.appから、バイナリデータの比較コマンド cmp を使って両者のデータの差異を比較。> cmp -l SHM.wav NML.wav
// SHM.wav ... SHM-CDから取り込んだ曲のwavファイル
// NML.wav ... 通常CDから取り込んだ曲のwavファイル(もちろんSHM.wavと同じ曲)
ここまでで言えること。
- 『これがSHM-CDだ! 2』にパッケージされているSHM-CDと通常CDは、同一のマスターから作られた、同一の音源を使用していると思われる。記録されているデジタルデータも当然、同じである。
- 双方から同一の音データが取り出せたということは、両者から同一の音が再生されるということである。つまりSHM-CDと通常CDとの間で音質に差が生じるということは有り得ない。
あれ?
結論、出ちゃった?
いやいや、まだこんな理屈は成り立ち得ます。それは...
パソコンのCDドライブでオーディオデータを読み込むのとCDプレーヤーで音を再生するのは違うじゃないか。
パソコンの光学ドライブは「読み取りエラー訂正」をかなり厳しくやっている。例えばiTunesでリッピングする時も「オーディオCDの読み込み時にエラー訂正を使用する」という設定項目があったりする。今回、検証した時の取り込みでも、きっとエラー訂正はきちんと行われているだろう。
それに対してCDプレーヤーでは、リアルタイムでオーディをデータを読み込んで音信号を再生している。もちろんCDプレーヤーでもエラー訂正は行われているが、エラーが完全に訂正されずに「不完全な音」として再生されている可能性もある。その「エラー訂正」という作業が音質に何か悪い影響を与えている可能性も考えられる。
SHM-CDは「高精度の信号読み出し」を謳っている。
CD再生時のエラー訂正の不完全さ、またはエラー訂正という作業そのものが音質に影響を与えるとするならば、「高精度の読み出し」ができるSHM-CDのほうが再生音質が高いという主張も正しいのかも知れない。
なんだかとっても理屈っぽい文章になってしまいましたが、元・理系が極力誤読されないようにと気をつけて書く文章なんてこんなもの。
さて、この理屈は正しいんだろうか。
検証方法を考えて、また実験してみようと思います。→ 続きはコチラ。
ところでSHM-CD、実際に聴いてみた印象は? と尋ねられたら自分はこう答えます。
「普通のCDと違いがあるようには聴こえない」
自分の耳が正しいのか、それとも自分が逆プラシーボ効果(笑)に陥っているのかは、今のところ分かりません。でも違わないんだもん。
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