【野球・嘘ネタ】ホームラン55本達成後のカブレラは四球攻め。

2013年のプロ野球、東京ヤクルトのバレンティン選手が日本記録のシーズン55本越えペースで本塁打を量産しています。

過去、日本プロ野球でシーズン55本塁打を達成したのは

  • 王貞治(読売):1964年
  • タフィ・ローズ(大阪近鉄):2001年
  • アレックス・カブレラ(西武):2002年

の3名。ローズ、カブレラが記録更新を狙ったシーズン最終盤の試合では、相手チームが王貞治の偉大な記録を消さないために四球攻め。とりわけ2002年のカブレラに対しては、55本目を打った後の残り試合で、

1 四球 四球 三ゴ 四球
2 四球 四球 四球 四球
3 四球 四球 四球 四球
4 四球 四球 右飛 死球

以降骨折で出場なし

…という驚愕の結果が、2ちゃんねる発祥の嘘コピペとして流布しています。

ちなみにこのコピペの初出はこちらのスレね。

先日は夕刊フジZAKZAKがこのコピペに釣られて、「翌年にカブレラがタイ記録をマークした時点では、まだ7試合が残っていた。だがその後は16打席で14四死球とやはり勝負してもらえず、新記録はならなかった」などと記事にしてしまって(現在は何事もなかったかのように訂正済み)、これを信じてしまった人もいたような。

2002シーズン、カブレラが55号を打ったのは10月2日。この時点で残り5試合あったのですが、それらの試合でのカブレラの実際の打席別結果は次のとおり。

1 10/05 vs H :四球 中安 四球 死球 三振
2 10/06 vs @F :一飛 三邪 中安 四球
3 10/09 vs @BW :三振 左2 二飛 三振 敬遠
4 10/10 vs @BW :右飛 右飛 三振 左安 三振
5 10/14 vs @M :一飛 右飛 左安 三振

23打席 18打数 4安打 3四球 1故意四球 1死球 6三振
※参考:2003 ベースボール・レコード・ブック:ベースボール・マガジン社 刊

10月5日のホークス戦(王貞治監督ですね)を除いては、ものすごく普通に勝負してもらっているように見えます。

ちなみにこの前年、2001シーズンにタフィ・ローズが55本目のホームランを打ったのは9月24日。ローズ、残りの5試合の打撃成績は…

1 09/26 vs BW:4打数 1安打 0三振 0四球
2 09/29 vs @M:2打数 0安打 0三振 2四球
3 09/30 vs @H:2打数 0安打 0三振 2四球
4 10/02 vs BW:4打数 1安打 1三振 0四球
5 10/05 vs @BW:4打数 0安打 0三振 0四球

20打席 16打数 2安打 4四球 0死球 1三振
※参考:2002 ベースボール・レコード・ブック:ベースボール・マガジン社 刊

打席別の結果が見つからなかったので、試合ごとの成績で申し訳ない。残された結果だけを見れば、当時非難轟々だったホークス戦(王貞治監督ですね)を除けばあからさまに勝負を避けられた風ではありません。実際のスコアブックで投球内容をチェックしたら印象が変わるかもしれませんが。

ついでに1985シーズン、阪神のランディ・バースが54本目のホームランを打った後の試合。この時はシーズン終了まで残り2試合で、その2試合は共に巨人戦(王貞治監督ですね)。

1 10/22 vs G:4打席 2打数 1安打 0三振 2四球
2 10/24 vs @G:5打席 1打数 1安打 0三振 4四球
※参考:阪神タイガース 昭和のあゆみ(資料編)

1試合目はジャイアンツのエース・江川がバースに真っ向勝負。後続の投手は逃げました。2試合目はもうあからさまな勝負回避。

さて2013シーズン。ウラディミール・バレンティンは日本プロ野球のアンタッチャブル・レコードを超えることが出来るのか。シーズン終了まで、まともな勝負を見ることが出来るのか。

期待です。

【追記:2013.08.28】

さて、上記の文章を読むと「王さんが自分の記録を守るために自らの意思で卑怯な真似をした」あるいは「自分の記録を守るために、周囲の人間がそういう行為をするのを敢えて止めなかった卑怯な人物だ」という印象を受けるかもしれませんが、それは私の本意ではありません。

王さんはきっと、そんな器の小さい人物ではないと思うのですよ。

では何故に…とずっとモヤモヤしていたのですが、今日たまたま、こんな文章を見つけた。ちょっと長めの引用を。

(前略)ファンが喜び、球団経営上もプラスに作用し、王監督自身の評価も上がる。誰もが幸福になる選択を王監督はなぜしなかったのか。自分の記録を破られたくなくて汚いマネをしたセコイ奴。そういう評価が付いて回ることは承知の上だったはずだ。

 とすると、考えられるのは、「記録はさまざまな妨害を乗り越えて達成するもの」というトップアスリートとしての哲学の全うである。経営者にも大衆にも、メディアにも迎合してたまるかという強い思いが根底にあるのだとすればすとんと腑に落ちる。

うん、確かにこう考えると諸々がすとんと腑に落ちますな。

この記事、当時の状況も詳しく書かれているのでオススメです。

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