radikoは救世主なのか、という話。

さてさて、今春から全国展開か? のradiko、放送局的にはどうなのさ、という話。

radikoがどれくらい聴かれているかというと、株式会社化のときのニュース記事を見ると

現在は、週平均200万〜300万ストリームあるという。(出典:ITmedia)

…ということは、一日あたり40万ストリームくらい。で、1ストリームあたり、どれくらいの時間聴かれているかという数字を探してみると、これはサービス開始当初の値しか見つからなかったのですが、

平均22分2秒 (出典:ITmedia)

まぁサービス開始当初はお試し接続の一見さんも多かっただろうから、現在の平均聴取時間を超甘々に1時間と見積もりましょう。後々の計算もやり易いし。

インターネットラジオの世界では、どれくらい放送が聴かれているかという尺度としてTLH(Total Listening Hours)という指標を使います。文字どおり「積算聴取時間」、すなわち「ストリーム数 × ストリームあたりの聴取時間」で計算されますが、radikoの場合、超概算で

一日あたり:40万(ストリーム)×1(時間) = 40万TLH

となります。

これ、インターネットラジオとしてはもの凄い数字です。あくまで「インターネットラジオ」としては。

こいつを、地上波で言うところの聴取率に換算してみましょう。
聴取率というのは

聴取率 = 放送を聴いている人の数 / 人口

で求められますね。

現在のradikoサービス地域(=関東圏&関西圏)の人口は、日本の総人口の約半分。だいたい6,000万人としましょう。ストリームベースではなく、聴取人数ベースのTLHを求めてみると、一日あたりの聴取人数ベースTLHの理論的最大値は、

一日あたり:6,000万(人)×24(時間) = 144,000万TLH

で、これが分母。エリア内の全員が24時間聴き続けたら、全日平均聴取率は100%。全員が平均して12時間聴いた場合、あるいは半数の人が24時間聴いた場合には全日平均聴取率は50%になりますね。

分子は、上で求めた 40万TLH をそのまま使っても良いのですが、「1ストリームを複数人で聴いている」という可能性も考慮して、聴取人数ベースのTLHを概算してみましょう。1ストリームあたり、平均3人のリスナーが居る…ということで良いですか。これも甘い数字だと思いますが、

一日あたり:40万(ストリーム)×3(人/ストリーム)×1(時間) = 120万TLH

でどうでしょう。

となると、radikoの全日平均聴取率は

全日平均聴取率 = 120万 / 144,000万 = 0.00083 = 0.08%

radikoには現在13局が参加しているので、単純に1局あたりの値を求めると

0.08 / 13 = 0.006

つまりラジオ局は、radikoに参加することによって全日平均聴取率が0.006ポイント増加することが期待できる

わはは。わざわざお金を払ってradikoに放送を乗せる意味なくね?

いやいや、パーセンテージで出すからいけないのであって、実数として一日40万人のリスナーが増えたので、それはそれで大きい…という考え方もあるでしょうが、6000万人に対しての40万人。しかも「いままでラジオ受信機で聴いていたけどradikoに乗り換えた」という、以前からラジオを聴いていた人の数もこの40万人という数字に含まれていると考えると、やっぱり厳しいですなぁ。

まぁ数字だけではないプラス効果もあるのでしょうが、radiko投入は焼け石に水、「radikoが地上波ラジオの救世主になる」という認識は限りなく甘い考え、な気がします。

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